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人間よ、貪欲であれ
人間は貪欲である。それ故、時に人は多くの成功を収め、多くの利益を得る。しかし時には失敗をし、また、あまりの貪欲さ故に始めの成功さえもフイにしてしまう。

人は全てを得られると思うべきではない。しかし、貪欲である事は構わない。いや、むしろそうあるべきである。その貪欲さが人に高い理想や夢を持たせ、その実現に人はいかなる努力も惜しまないだろう。あまりに高い理想を掲げ、その実現叶わず挫折するかもしれない。しかしそれは次なる理想に向けての大いなる教訓となるだろう。

そして俺もそんな貪欲な人間の一人である。

あれは俺が高校二年生の頃、私立高校は早くも受験に向けての面談やら、勉強やらに熱が入っていた。 当時俺には、まだこれと言って志望校というものも決まっておらず、これから行われる面談で何を言ったものか、苦悩していた。10分に渡って考えに考え抜いた末、俺は一つの結論を出すに至る。どうせなら理想は高く持っておいた方がいい。その実現叶わずとも、きっと俺は何かしらの教訓を得られるだろう。そして面談当日、俺は担任の先生を目の前に重い口を開いた。

『東大に行きます♪』

その発言は先生に一瞬の驚き、及びかすかな笑いを招いた。フン、笑うがいいさ。しかし二年後、赤門をくぐる俺に対し先生は今日の笑いを詫び、そして俺の類稀なる能力と、隠れた努力を思って涙するに違いないのだ。

教室に戻り友達に話すと、その反応は先生のそれと同様のものだった。俺は一緒になって笑い、それはギャグの一つとして片付けられたわけだが、俺は本気だった。俺にはそれだけの能力がある、努力次第では間違いなく行けると信じて疑わなかった。

・・・二年後、俺はそこそこの大学にそこそこ勉強して入った。それでも先生はちょっと驚いている様子だった。俺の能力はそれほどまでに信じられていなかった。そして、その挫折は少しの教訓ともならなかった。いや、正直挫折感すらなかった。いつの間にか結局自分でも妥協しているのである。

・・人間は貪欲であるべきである。も、もし高い理想を掲げたが故に挫折したとしてもね、それはきっと教訓となってね・・・・・・・・あぁ、言ってて悲しくなってきた。色んな言葉が浮かんできた。

『高望み』『言うだけならタダ』『今日の夕飯は簡単なもので済ませましょ。』

俺はこれからも努力を怠り、手近な理想を叶え、それに挫折感すら抱かないのだろうか・・?まぁ別にいいけどね。今の大学に居て楽しいし、単位も取りやすいし。下手に東大なんて行って、場違いな空気に押しつぶされ、遅れをとらないように日々勉強を重ねる、そんな毎日より絶対楽しいやい。

また言葉が浮かんできた。

『負け犬の遠吠え』





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